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【角膜・眼表面】眼アレルギー治療

角膜・眼表面
眼アレルギー治療

長谷川 亜里

角膜・眼表面
眼アレルギー治療

眼科専門医長谷川 亜里

JCHO中京病院 眼科 医長

アレルギー性結膜疾患とは

アレルギーとは、周囲の環境の何らかの異物に対して、体がおこす過剰な反応のことをいいます。アレルギー反応が結膜(白目)に起こり、それに伴って結膜(白目)や角膜(黒目)などに生じた炎症反応によって、なんらかの自覚症状が出ている状態を、アレルギー性結膜疾患と呼びます。
日本人の約15~20%がアレルギー性結膜疾患を有すると考えられています。患者数は10代にピークがあり、加齢に伴い減少すると考えられています。
発症要因や結膜(白目)の状態により、①アレルギー性結膜炎(季節性・通年性)、②アトピー性角結膜炎、③春季カタル、④巨大乳頭結膜炎の4つの病型に分類されます。

アレルギー性結膜疾患の症状

自覚症状には、目のかゆみ、充血、めやに、異物感などが多く、目の状態によっては痛みやまぶしさ、涙が出る、見えにくいといった症状が出ることもあります。アレルギー性鼻炎を伴う場合も多く、くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状がみられます。

アレルギー性結膜疾患でよくある症状(TOP10)

第1位 目のかゆみ
第2位 充血
第3位 くしゃみ
第4位 鼻水
第5位 鼻づまり
第6位 めやに
第7位 涙が出る
第8位 異物感(ゴロゴロする、コロコロする)
第9位 皮膚のかゆみ
第10位 目の痛み
第1位 目のかゆみ
第2位 充血
第3位 くしゃみ
第4位 鼻水
第5位 鼻づまり
第6位 めやに
第7位 涙が出る
第8位 異物感(ゴロゴロする、コロコロする)
第9位 皮膚のかゆみ
第10位 目の痛み

アレルギー性結膜疾患の検査

診察をすると、結膜(白目)に充血や浮腫(腫れ)、濾胞(ろほう)や乳頭と呼ばれるつぶつぶした隆起状の変化などが見られます。重症化すると、角膜(黒目)に傷ができ、視力低下の原因となることもあります。 アレルギー発症の原因となる原因物質には、花粉(スギ、ヒノキ、シラカンバ、イネ科植物、ヨモギ、ブタクサなど)、ダニ、カビ、ペットなどがあります。アレルギーの原因物質は、皮膚テストや血液検査などで調べることができます。

重症なアレルギー性結膜疾患

アレルギー性結膜疾患が重症化すると、結膜に1㎜を超えるような大きな乳頭(巨大乳頭)が多数できるなどの強い変化が起こる場合があります。これを結膜の増殖性変化といいます。増殖性変化を生じて特に重症化しやすいのは、春季カタル(および一部のアトピー性角結膜炎)の患者さんです。

春季カタル

アトピー体質の学童期の子ども、特に男児に起こりやすいことが知られています。上まぶたの裏側に巨大乳頭が多数できる石垣状乳頭増殖や、角膜(黒目)と結膜(白目)の境界が腫れて凸凹になるTrantas斑とよばれる増殖性変化を生じます。
春季カタルでは、角膜(黒目)の障害を生じることも多く、視力低下などの後遺症が残ることもあります。

アトピー性角結膜炎
思春期以降の顔面のアトピー性皮膚炎に伴って起こりやすく、まぶたのアトピー性皮膚炎が悪化すると、結膜の状態も重症化しやすくなります。
アトピー性角膜炎でみられる変化はかなり個人差がありますが、春季カタルと同じように巨大乳頭ができたり、角膜障害を伴う場合もあります。また感染性角膜炎や角膜ヘルペスを併発しやすいことも知られています。
重症なアレルギー性結膜疾患と円錐角膜
アレルギー性結膜疾患では、目のかゆみで悩まされる方が最も多いですが、かゆいからといって目を擦ることは良くありません。
目を擦る習慣ができることで、円錐角膜(黒目が突出してひずんでしまい、見えにくくなる病気)や白内障、網膜剥離といった病気を生じる可能性があり、実際に、重症なアレルギー性結膜疾患を有する患者さんではこれらの疾患を併発しやすいことが知られています。
また、目を擦ることでかえって炎症が悪化し、目のかゆみなどのアレルギーの症状は悪化してしまいます。治療によって症状をしっかりコントロールすることが重要です。

アレルギー性結膜疾患の治療

点眼療法
点眼治療が基本となります。アレルギーの状態に応じて、抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬、重症な春季カタルやアトピー性角結膜炎では免疫抑制剤の点眼薬を併用して治療を行います。アレルギーの点眼薬というと、症状があるときだけ使用するように思われがちですが、痒いときに点眼薬を使用してもすぐには効果が出ないので、症状に応じてある程度定期的に点眼を行う必要があります。
ステロイド点眼薬や免疫抑制剤の点眼薬は、アレルギーの症状緩和に非常に効果的で全身への影響が少なく安全であるため治療に用いられますが、眼圧上昇や感染症といった目の副作用のリスクが稀にあるため、使用している間は眼科での定期診察が必要です。
プロアクティブ療法

プロアクティブ療法とは、簡単にいうと、「症状がなくても、決められた点眼を決められた回数さしていくほうが症状を抑えられる」ということです。
一見症状がなくても粘膜のレベルではアレルギー反応が起こっています。そのため、かゆいと思ってからその都度数回だけ点眼する、という方法ではアレルギー反応を抑えにくいのです。症状が落ち着いてからも点眼を継続し、その後長期的にゆっくり減らしていく方法(プロアクティブ療法)のほうがアレルギー反応を抑えやすい、ということがわかってきています。
花粉症などの季節性アレルギー性結膜炎では症状の出る期間が短く、セルフケアによって抗原を浴びないように気を付けることができるため、必ずしもこの限りではありませんが、重症化しやすい春季カタルやアトピー性角結膜炎では、プロアクティブ療法を基本に治療しています。

舌下免疫療法
アレルゲン免疫療法(減感作療法)の一種で、アレルギーの原因物質を少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていく治療法です。アレルゲン免疫療法は、アレルゲンを含む治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が古くから行われていましたが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で服用できるようになりました。ただし、治療期間が3~5年と、根気のいる治療になります。
舌下免疫療法は、スギ花粉症とダニアレルギーの治療が可能となっています。
外科的治療
免疫抑制剤の点眼薬の登場により、アレルギー性結膜疾患のために外科的治療を必要とする患者さんは稀になりましたが、一部には外科的治療(結膜乳頭切除など)が必要となる場合もあります。結膜乳頭切除は、重症な春季カタルの患者さんで、再発を繰り返す場合や、免疫抑制剤の点眼薬が無効な場合などに行っています。
また、春季カタルでは角膜にシールド潰瘍という硬い沈着物が付着することがあります。そのような場合も外科的に除去する必要があります。

参考:日本眼科学会アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版)
アトピー性角結膜炎と春季カタル 高村悦子 あたらしい眼科 32(6): 841-842, 2015.

眼科専門医 長谷川 亜里
眼科専門医
長谷川 亜里
アレルギーは、症状があっても我慢してやり過ごしている方もいると思います。軽症であればそれでも問題にならないことが多いですが、眼を毎日擦り続ける影響は意外と大きく、思いがけない重症な病気を発症する場合もあります。お困りの方は、一度相談にお越しください。

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