白内障の最適な手術や治療を解説。さらに費用の目安などを掲載。

白内障事典
「見える扉」を開くために。

歳を重ねるにつれ、発症率が高くなる
白内障は、身近な眼疾患と言えます。
白内障事典は、約80,000件もの白内障手術の
実績を持つ専門医が、
白内障と
その治療法について解説します。
白内障で悩んでいる方の
「見える扉」を開くために。

手術

白内障は手術とケアによりほぼ回復する病気

白内障への対処としては、手術による治療が一般的ですが、進行の度合いや水晶体の濁り方によっては、見えにくさを感じない方もいます。そういう場合は急いで手術をする必要はありません。
しかし、白内障と診断された75歳以上の方のうち、50%の方は手術が必要とされています。

手術と言われると、「痛いのではないか」とか「高齢で手術に耐えられないのではないか」と心配される方もいますが、白内障の手術は、麻酔は点眼薬で済み、手術による身体への負担もほとんどありません。手術そのものにかかる時間は10分〜20分程度で、手術後の処置や経過観察が必要な場合は3日〜4日入院することもありますが、何も問題がなければ日帰りが一般的です。
手術前の検査や手術後のケアはもちろん大切ですが、医師の指示に従えば、何も心配することはありません。白内障は手術ときちんとケアすれば、ほぼ回復する病気なのです。

進化する白内障手術

以前の白内障手術と言えば、水晶体が入っている袋、水晶体嚢(のう)を大きく切って水晶体の核を取り出す「水晶体嚢外摘出術」が行われていましたが、この方法は、傷口が大きくなり縫合の必要もあるため、手術後に乱視や合併症の恐れがあり、視力回復に時間がかかるなどの問題がありました。

 

そこで開発された手術法が、「超音波乳化吸引術」です。この手術法は、角膜を小さく切開し、そこから超音波チップという器具を挿入して濁った核を砕き、それを吸い取る画期的な手術法です。この超音波乳化吸引術なら、傷口が小さく縫合の必要がないため、目への負担が軽減されます。現在、世界中でもっとも広く施術されている白内障の手術法です。
ただし、白内障が進行して核が硬く、大きくなり過ぎると、超音波を使っても核が砕けなかったり、砕くための時間がかかり過ぎ、超音波乳化吸引術ができない場合があります。長い時間、超音波をかけ過ぎると、後ろの膜(後嚢:こうのう)が破損して、眼球を維持しているゼリー状の硝子体が出てしまったり、水晶体が目の奥に落ちてしまうというリスクがあるためです。

 

超音波乳化吸引術ができない場合、合併症のリスクを考慮しながらでも、前述の水晶体嚢外摘出術で対応せざるを得ないケースもあります。このような事態に陥らないためにも、白内障の手術はできる限り早く行うことが肝心です。

 

超音波乳化吸引術

水晶体嚢外摘出術

レーザー白内障手術

技術の進歩とともに、白内障の手術法は近年著しく進歩しています。
「レーザー白内障手術」も最先端技術による手術法のひとつで、白内障手術の重要な部分をレーザーで施術します。手術の重要な部分とは、前嚢(ぜんのう)切開、水晶体の断片化、角膜切開という過程です。これらの施術は、手術後の目の見え方に特に関係するため、眼科医はこの施術のトレーニングを続けているのです。

 

レーザー白内障手術は、正確な切開ができるため、眼内レンズを固定させるという観点から見ても画期的な手術法と言えます。また、超音波乳化吸引術の場合には水晶体を砕いてから吸い取りますが、レーザーの場合は、あらかじめ水晶体を切ってから吸い出すことができますので、手術の負担が小さく、手術後の網膜の腫れなどの炎症が少なくなります。さらに、他の手術法では、角膜切開による乱視の可能性もありますが、レーザーを使用した場合には、乱視発生を調整するだけでなく、すでに生じている乱視を矯正する施術も可能となります。
先進医療や自由診療で用いられる眼内レンズは、極めて精密にできているため、適切な位置に固定されて初めて最大の効果が期待できます。そのため、保険診療外の眼内レンズを希望される方には、特にレーザー白内障手術をお勧めします。

 

LenSx(R)レーザー

白内障の最適な手術・治療と費用

白内障の手術を受けるまでに医療機関ではさまざまな検査をした後で、医師から手術の費用について説明があります。このとき、医師や医療施設の方針、設備によって、保険診療での手術・治療を勧められる場合もあれば、より幅広いオプションを提示されるケースもあります。
患者さまは医師に相談しながら手術・治療方針を決めていくわけですが、問題なのは、患者さまが自身の白内障の病状を知らず、自分に適した手術・治療法を選択できないということです。
保険診療で誰でも最適な手術・治療が受けられるのならば問題はないのですが、白内障の場合、保険診療が適している方もいれば、保険適用の診療と適用外の自由診療の混合が認められている先進医療制度を使った治療や、全額自己負担となる自由診療による治療が適している方もいます。

また、同じ種類の眼内レンズしか使わない医師が多く、他メーカーや他タイプの眼内レンズの方が患者さまに適していても、患者さま自らそれを選択することはできないのです。
例えば、優れた眼内レンズがあっても、装着するためには高い技術が必要になるため、医師が避けてしまうケースがあります。
こうした現状を知らず、医師に言われたまま手術を受けてしまうと、自分に適していない手術・治療にも関わらず高額な費用になってしまい、「こんなはずじゃなかった」と、手術後に悔やむことになりかねないのです。
では、患者さまが自分に適した手術・治療法を選択するためには、どうすればいいのでしょうか。それは、まず患者さまご自身が白内障の手術や治療について、きちんと理解しておくことです。
手術の方法やメリット・デメリットはもちろん、自分に最も適した手術・治療を受けるにはどの程度の費用がかかるのか、保険診療と自由診療との違いはどこにあるのかなど、基本的な知識を備えていれば、医師に詳しく質問することもできます。そして、自分の希望に沿った手術・治療法を選択することができます。

白内障手術・治療にかかる費用の目安

白内障の手術・治療の費用には、おもに手術前・手術後の検査などの費用と、手術費用(眼内レンズの費用を含む)に分けられます。
一般の会社員の方など、健康保険3割負担の診療では、手術前・手術後の検査費用で2万円程度。手術費用は、保険適用の単焦点眼内レンズの費用も含め、片目で4〜5万円程度。合計すると、片目なら6〜7万円、両目なら12〜14万円ほどになります。

また、70歳以上の方で1割負担の場合、片目で2万円程度、両目なら4万円程度という費用が一般的です(注意:保険改正により費用は変動します)。この費用は、医療機関によって若干異なります。入院したり、他の治療が並行して行われる場合、別途費用が加算されます。
これに対して、健康保険が適用されない眼内レンズを使用する場合、原則的には自由診療となり、検査費用、手術費用、どちらも自己負担となります。ただし、「多焦点眼内レンズ」という保険適用外の眼内レンズは、厚生労働省が定める、先進医療制度が適用され、先進医療とされる部分は自己負担となりますが、通常の治療や検査、投薬をする部分については健康保険が適用されます(注意:先進医療制度を利用する場合は、厚生労働省が指定した先進医療機関で治療を受ける必要があります)。つまり、手術前・手術後の検査などの費用の部分は、健康保険診療と同じ2万円程度(3割負担の場合)となります。

自由診療の費用

保険適用と適用外で費用が大きく異なるのは、手術の部分です。
例えば、多焦点眼内レンズという高付加価値の眼内レンズを使う場合、手術費用は自己負担となり、片目で40万円前後、両目なら80万円前後という費用がかかります。さらに検査費用なども含めた総額では、片目で45万円程度、両目で90万円ほどになります(注意:医療機関により異なります)。ただし、先進医療を対象とする任意保険に加入している場合、補償を受けることができますので、詳しくは加入されている保険会社へ相談してください。
また、1ヶ月の間に健康保険で支払った金額が限度額を超えた場合、「高額療養費」の対象となり、負担限度額を超えた金額が公的医療保険から払い戻しされます。限度となる金額は、年齢や収入によって異なりますので、各保険の窓口にお問い合わせください。

眼内レンズの中には、海外で広く使われていても、日本ではまだ先進医療としても認められていないものがあります。こうした眼内レンズを使用する場合、検査費用も手術費用もすべて自己負担となるため、片目で50万円前後、両目で100万円ほどの費用がかかります。
保険診療と自由診療を比べると、その費用にかなりの開きがあるため、初めから保険診療を選択される患者さまは少なくありません。しかし、日々の生活の質に大きく関わる目のことですから、少なくとも保険診療・自由診療の内容の違いについて、きちんとした知識を得てから判断してください。最終的に保険診療を選択するにしても、ただ「安いから」という理由だけでなく、自分のライフスタイルや、必要な視力などを十分に考慮したうえで、治療方針を決めてください。

手術後の注意点と回復期間

日帰り手術の場合、手術後の検査で問題がなければそのまま帰宅できますが、目に触ったり、こすったりしないように気をつけてください。医療機関より透明のゴーグルが渡されると思いますので、必ず装着して目を保護してください。
手術の際、瞳を大きくして手術をやりやすくするため、散瞳薬(さんどうやく)が使われます。そのため、手術後しばらくは、物がぼやけて見えたり、眩しさを感じたりしますので、クルマやバイク、自転車の運転はできません。十分に注意してください。
一般的に、手術の傷が落ち着くまで1週間程度はかかります。手術後のケアの目安は、当日・1週間・1ヶ月程度を区切りとして、少しずつ普通の生活に戻していくことになります。
また、手術後は、細菌などの感染症を起こさないように、手や指、目のまわりを常に清潔に保つよう患者さまご自身が細心の注意を払ってください。
手術後1ヶ月ほど経過すると、少しずつ普通の生活ができるようになります。水泳などのスポーツも、医師と相談しながら始めることができるでしょう。

通院の回数は、毎週・2週間に1回・1ヶ月後など、患者さまの状態や医療機関によって異なりますが、必ず受診し、必要な点眼薬も処方してもらってください。通院の予定がなくても、強い痛みや目の充血、視力の低下、見え方がおかしいと感じたら、直ちに受診してください。
手術後2ヶ月〜3ヶ月経過し、視力が戻ってくると、つい目を使いすぎる生活に戻る方が多いのですが、実はこの時期、まだ目のバリア機能は完全には回復していません。白内障による視力の低下が改善され、快適な生活を満喫したい気持ちはよく分かりますが、ここで目を酷使し続けると、せっかく得ることができた視力が落ちてしまいます。最悪の場合、黄斑部浮腫(おうはんぶふしゅ)といって、網膜にむくみが出てしまい、失明することさえあります。
こうした症状を防いでくれる、非ステロイド系消炎剤(点眼薬)が医療機関から処方されているはずですので、手術後は痛みがなくても必ず点眼を続けてください。
目の機能の回復には時間がかかります。完全に回復するまで、医師の指示に従って点眼薬を使ってください。

白内障の手術後に起こりがちな症状への対応

●濁りが取れたために起こる「飛蚊症」

黒い小さな点や糸くずのようなものが見え、目を動かしてもそれがついてくるように見える症状。水晶体の濁りが取れ、目の中に光がよく届くようになるため、今まで見えなかった濁りまで見えるようになってしまう。多くの場合は心配する必要はないでしょう。

 

●「糖尿病網膜症」は、すぐに治療を始める

糖尿病網膜症を併発しているときは、網膜症の手術を先に行いますが、水晶体が濁って網膜が見えにくい場合には、白内障の手術を優先させることもあります。白内障の手術で視力が回復すると、網膜症も治ったように感じることもありますが、逆に手術がきっかけで網膜症が悪化することもありますので要注意ですので、引き続き網膜症の治療を続けてください。

 

●緑内障を引き起こす「高眼圧症」

白内障手術を受けると、眼圧が急に上がってしまうことがあります。特に緑内障の方は、眼圧が上がりやすいので要注意ですので、眼圧が上がったら、点滴や点眼薬などですぐに対処してください。

 

●物が歪んで見えたら「嚢胞様黄斑浮腫」を疑う

手術後、炎症が原因で嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)を発症することがあります。網膜の中にある黄斑部という場所が腫れて、視力が低下したり、物が歪んで見えたりする症状(変視症)です。軽傷では自覚がないケースもありますので、きちんと検診を受けるようにしてください。

白内障事典 監修
医学博士

市川 一夫

医療法人いさな会 中京眼科 視覚研究所 所長
独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院 眼科 顧問

医学博士 市川一夫

1978年、愛知医科大学医学部医学科卒業。
1983年、名古屋大学大学院医学研究科博士課程(外科系眼科学専攻)修了。
社会保険中京病院眼科医長を経て、1986年、同院眼科主任部長に就任。
眼科医療では、一般的に年間200〜300件の白内障手術を行う医師の中、年間3,000件以上の白内障手術を執刀し、生涯執刀数は80,000件を超える。

また、1994年、社会保険中京病院眼科を中核とした、病院・クリニックグループを支援する、株式会社中京メディカルを設立。眼科専門医の指導、育成にも尽力し、年間約14,000件の手術指揮を行う。
さらに、国際医療支援活動にも積極的に取り組み、毎月海外で白内障手術を執刀。
現在、名古屋大学医学部臨床講師、北里大学医学部眼科非常勤講師、大連医科大学客員教授も務める。

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